以前の日記にて、カステラは南蛮人貿易時に長崎に伝えられたと記載しました。
伝来した当時は硬くてボソボソとした食感であった「ビスコッチョ」というお菓子が、日本独自の原料や製法により現在のような広く伝わるカステラの形状になりました。
※木枠に入ったできたてのカステラ
現在カステラは、「長崎カステラ」と「カステラ」を分けて使われる事が多くなっています。
「長崎カステラ」とは、長崎で製造されたカステラを指すものではなく、一般的には「長崎式」のレシピや製法で作られたカステラの事を指定しています。
代表的な長崎にあるカステラ屋では、「福砂屋」「文明堂」「松翁軒」などが挙げられます。
長崎カステラのレシピとしては、原材料に砂糖、卵、小麦粉、水あめ(または蜂蜜)を使用して作ることが一般的です。
※カステラの基本原材料
生地の特徴としては、甘みが強く、どっしりとしていて食べ応えがあり、重厚感があるのが特徴です。
長崎式で製造されていない、いわゆる「カステラ」ですが、各地にて受け入れられるように少しだけマイナーチェンジしているものも多数存在します。
生地に牛乳やバターを入れてコクを出したり、糖分を控え小麦粉の量を少なくすることで口当たりの良い軽い生地を作るなど、工夫を凝らすことで地域に受け入れられたメーカーも存在します。
また、カステラを製造する時に最も重要な「卵の泡立て方」ですが、これについては「別立て法」と「共立て法」の二種類があります。
「別立て法」は卵を卵黄と卵白に分け、それぞれを別個に攪拌して泡立てていく製法です。
※一般的な卵白の泡立て
たんぱく質と水分でほとんどが構成されている卵白と違い、卵黄には油分が含まれております。
これにより卵が泡立つ事を阻害していきます。
ゆえに卵黄と卵白を分けて攪拌する方が泡立てる作業が楽にできます。
「共立て法」は卵を卵黄と卵白には分けずに、割卵後一緒に泡立てていく製法です。
カステラが製造された当時は、まだミキサーなどの機械式撹拌機が存在せず、卵黄と卵白を一緒に攪拌して泡立てる作業は非常に労力のかかる作業でした。
ゆえに多くのカステラメーカーは、卵黄と卵白を分けて泡立てる「別立て法」によってカステラを製造していました。
近年は機械化が進み、卵を攪拌する技術が向上。
どちらの製法でも卵を泡立てる事ができるようになりました。
ただ、作業効率やオペレーションが見直され、機械化が進む現代のお菓子製造においても、老舗と言われるカステラ屋の一部では、技術の伝承のために未だに創業当時の「手業(てわざ)」にてカステラを作り続けています。
※カステラ生地を手業により中混ぜする職人
時代が変化しても、変えていくものと変わらないもの。
その中に「伝統」や「老舗の矜持」があるのではないでしょうか。
※弊社カステラ銀装では、一部店舗で販売している「窯出しカステラ」という商品がございます。
このカステラは創業当時のカステラ焼成技術を伝承していくため、職人一人一人が材料の調合や焼成、切り分けなどを最初から最後まで行っています。
窯出しカステラにいて→ http://www.ginso.co.jp/goods/kama/main.html
〈まとめ〉
①カステラには長崎式で製造された「長崎カステラ」と「カステラ」がある。
②カステラ作りに重要な「卵の泡立て方」には「別立て法」と「共立て法」がある。
③伝統ある老舗のカステラ屋は技術の継承のためあえて手作業でのカステラ作りを続けている。